パートナーシップは「契約」から始まらない。最初の1件をどうつくるか
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本記事は 内田 智英(株式会社アイリッジ ビジネスパートナー部 副部長 兼 アライアンス戦略グループ グループ長)の寄稿によるものです。
「パートナーを増やしたい」
「アライアンスを始めたい」
そう考えて、まずパートナー候補企業を探し、商談を重ね、協業契約を締結する。
ここまでは比較的スムーズに進むことがあります。
しかし、その後、
「契約はしたけれど、なかなか一緒に案件が動かない」
という状態になってしまうケースは少なくありません。
私自身、これまで50社を超える企業とのパートナーシップを構築してきました。その中には、実際に複数の案件を共同で受注し、事業として大きく成長したパートナーもあれば、契約後になかなか活動が活性化しなかったケースもあります。
その経験を通じて感じているのは、
パートナーシップは、契約した時点がスタートではない。
むしろ、本当のスタートは「最初の1件を一緒につくること」だということです。
「補完性がある」と「一緒に売れる」は違う
パートナー候補を探す際には、
「この会社は自社にないサービスを持っている」
「顧客層が近い」
「お互いのサービスを組み合わせればメリットがありそう」
といった観点で、相性を判断します。
もちろん、これは重要です。
ただ、実際に協業を始めてみると、
「補完性がある」ことと「一緒に売れる」ことは別物
だと分かります。
お互いに忙しく、相手の営業担当が自社の商品を十分に理解していない。
「何か案件があれば紹介します」と言って終わってしまう。
そもそも、どのお客様に何を提案すればよいのか、両社で具体化できていない。
こうした状態では、どれだけ良いサービス同士でも、なかなか案件にはつながりません。
最初の1件は「一緒につくる」
そこで私が大切にしてきたのが、最初の案件をパートナー任せにしないことです。
「案件があったら紹介してください」ではなく、
- 一緒に顧客へ訪問する
- 共同で提案を考える
- 顧客課題を起点に新しい協業テーマを考える
- 両社で勉強会を開催する
- 営業だけでなく、企画・技術などのメンバーも交流する
といった活動を行います。
特に意識しているのが、会社同士だけではなく、人と人の関係をつくることです。
実際に勉強会や懇親会などを開催し、お互いの会社やサービスだけでなく、そこで働く人やカルチャーを知ってもらう。
すると、
「この案件なら、あの会社に相談してみよう」
「この領域なら、あの人に聞いてみよう」
という関係が少しずつ生まれてきます。
パートナーシップを動かすのは、契約書だけではありません。
「この人と一緒なら何かできそうだ」という感覚も、非常に重要だと考えています。
「パートナーを探す」のではなく、「一緒に何をつくるか」を考える
私自身、印象に残っている取り組みの一つが、O2Oの考え方を金融業界向けに展開したケースです。
当時、流通・小売領域でO2Oの取り組みが広がり始めていました。
そこで、単に「O2Oというサービスを売る」のではなく、
「この考え方を金融業界に持ち込めないか」
と考えました。
金融機関にとってどのような価値になるのかを整理し、パートナー企業に企画として持ち込み、共同で金融機関向けの提案へと発展させました。
結果として、共同で複数の案件を受注し、実際のサービスとしてリリースするところまでつなげることができました。
ここで重要だったのは、最初から「この会社に自社の商品を売ってもらおう」と考えていたわけではないことです。
「両社の強みを組み合わせると、今までになかった提案ができるのではないか」
というところから始めています。
BaaS × アプリ × マーケティングという組み合わせ
もう一つの例が、金融機関が展開するBaaSとの協業です。
金融機関にはBaaSという強みがある。
一方、当社にはスマートフォンアプリの企画・開発・グロース支援や、アプリに組み込むマーケティングソリューションという強みがある。
それぞれを単独で提案するのではなく、
BaaS × アプリ × マーケティング
という形で組み合わせ、共同で顧客へ提案する。
これによって、お互いのサービスを単純に「紹介し合う」のではなく、一社だけでは提供できなかったソリューションを一緒につくることができます。
これが、私が考える「相互補完型のパートナーシップ」です。
0→1の次に必要なのは、1→10
もちろん、最初の1件ができたからといって、それだけで終わりではありません。
むしろ、そこからが本当の意味でのパートナーセールスだと思っています。
一つ成功事例ができれば、
- どの顧客に提案できるのか
- どんな課題に刺さるのか
- どのサービスを組み合わせるのか
- 誰が営業するのか
- どのように案件を作るのか
という「型」が見えてきます。
その型を別のパートナーにも展開する。
パートナー数を増やす。
共同案件を増やす。
さらに、個人の経験だけに依存しないよう、アライアンスチームのメンバーを増やし、考え方や進め方を組織に展開していく。
私自身、パートナープログラムを0→1で立ち上げ、その後50社超までパートナー網を拡大しながら、実際の案件・売上につなげてきました。
その中で、0→1だけでなく、1→10へ広げ、さらに組織として再現できる状態をつくることの重要性を実感しています。
パートナーの「数」だけをKPIにしない
パートナー戦略というと、
「何社契約したか」
という数字に目が行きがちです。
もちろん、一定の母数は必要です。
しかし、本当に重要なのは、
何社と契約したかではなく、何社と一緒に事業をつくることができたか。
だと思います。
そのためには、
誰と組むか。何を一緒につくるか。最初の1件をどう生み出すか。その成功をどう1→10へ広げるか。
この4つを一つひとつ考える必要があります。
「次の成長」をパートナーシップからつくる
私は現在、スタートアップや成長企業だけでなく、既存事業を持ちながら次の成長に向けたチャレンジを模索している中堅・中小企業にも、こうした考え方を活用できると考えています。
例えば、受託開発やSI、SESなどを中心に事業を展開してきた企業が、
「既存事業はある程度安定しているが、次の成長の柱をつくりたい」
「大手企業との取引をもっと増やしたい」
「新しいサービスや事業を立ち上げたい」
「自社だけではなく、他社と組んで新しいことに挑戦したい」
と考えるケースです。
また、経営者の世代交代を機に、新しい事業や市場への挑戦を考えている企業にも、パートナーシップという選択肢は有効だと考えています。
一方、大企業にとっても、すべてを自社だけでつくるのではなく、スタートアップや専門企業など外部の力を組み合わせることで、新しい顧客価値や事業を生み出せる可能性があります。
企業の規模にかかわらず、「自社だけではできないこと」をどう他社と組み合わせて実現するか。
これが、私がこれまで取り組んできたパートナーセールス・アライアンスの本質だと考えています。
おわりに
パートナーシップは、契約書にハンコを押したところから始まるのではありません。
最初の1件を一緒につくる。
そして、その成功を、
1→10へ広げる。
さらに、それを個人の人脈や経験だけに頼らず、組織として再現できる仕組みにする。
私自身、0→1から1→10、そして組織への展開まで経験してきたからこそ、パートナー戦略に悩む企業の皆様と一緒に、実際の案件・事業につながるところまで伴走したいと考えています。