パートナーセールスを「最初の1社」からどう作るか — ゼロイチを越えるために本当にやったこと
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本記事は 冨樫 嘉一 の寄稿によるものです。
「パートナーセールス、ゼロから立ち上げたいんです。何から始めればいいですか」
この相談を、最近とくによく受ける。SaaS各社で売り切り直販が頭打ちになり、パートナー経由の売上を作りに行きたい、という文脈だ。気持ちはよくわかる。私自身、配配メールの事業部内でパートナーセールス部門をゼロから立ち上げ、4年で受注件数を400%まで伸ばした経験があるので、そのときの判断を振り返って答えるようにしている。
ただ、最初に必ず言うことがある。「1社目のパートナーを獲ること」と「パートナー経由で売れる状態を作ること」は、まったく別の話だ、と。
契約数を最初のKPIにすると、ほぼ確実に止まる
立ち上げを焦る会社は、契約社数を最初のKPIに置いてしまう。3ヶ月で20社、半年で50社、と数字を積み上げて、それで「立ち上がった」と報告したくなる。気持ちはわかる。でも、契約しただけのパートナー企業は、ほぼ動かない。動かないどころか、社内の誰も自社プロダクトを知らないので、お客様の前で名前すら出てこない。これが現実だ。
では「最初の1社」とは何か。私の定義はシンプルで、自社のメンバーがそのパートナー企業と一緒に商談に入り、ナレッジを置いてきた1社のことだ。契約書を交わした1社、ではない。
構築フェーズは「効率」を語るタイミングではない

立ち上げの最初の3年間、私はメンバーに「とにかく現場に行け、案件に同席してこい」と言い続けた。ディストリビューターや大手販売会社から紹介をもらって、地域ごとに足で回る。展示会で名刺をもらった先に、翌週には会いに行く。地方なら「電車だと不便なので車に乗せてもらえませんか」と頼んで、移動中の30分で関係を作る。泥臭い、と言われればその通りだ。でもこのフェーズは、企業対企業の合意を取り付ける構築フェーズなので、効率を語るタイミングではない。
「商材を完璧に教え込む」は、立ち上げ期の罠
ここで多くの立ち上げ責任者が見落とすのは、「商材を完璧に教え込んでから営業に出す」ことに時間をかけすぎる、ということだ。構築フェーズでは、パートナー企業の営業マンが商材の細部まで知っている必要はない。必要なのはただひとつ、「お客様からこういうワードが出てきたら、うちのサービスを思い出してもらえる状態」を作ることだ。第一想起、これが取れているかどうかが、1社目の成否を決める。
運用フェーズの本丸は「お友達」を作ること
そして関係が回り始めると、私はよく「お友達を作れ」とメンバーに言う。お友達というのは、何でも話せて、相手もプライベートな話をしてくれる関係のことだ。これをKPIにしている。気恥ずかしい言い方かもしれないが、人対人のビジネスである運用フェーズでは、組織図の役職よりも、誰と誰がお友達か、のほうが商談を動かす。
お昼ランチでも飲みでも構わない。コストをかけて懐に入る。最終的にはパートナー先に常駐させてもらえる関係まで持っていって、案件同席を繰り返し、自分たちがいなくてもパートナー企業の営業だけで売れる状態を作る。ここまでくれば、そのパートナーは1社目の「成功事例」として、社内にも経営にも語れる存在になる。
経営には「現場の頑張り」ではなく「コスト構造」で説明する
経営に対しては、こう言ってきた。「直販マーケで1件取るコストと、パートナー経由のマージンを並べて見てください。パートナーは安いんじゃなくて、構築期はむしろ高い。でも運用に乗ったら桁が変わります」と。立ち上げに時間をくれと頭を下げるのではなく、コスト構造で説明する。これは経営側の言語に翻訳する作業であって、現場の頑張りを訴えることではない。
本当に作るべきは「最初の1社で得たナレッジ」
最初の1社、と書いたが、本当に作るべきは「最初の1社で得た自社内のナレッジ」だ。これがあれば2社目、3社目は速くなる。なければ、契約数だけが積み上がって、誰も動かないリストが社内に残る。私が見てきた立ち上げの分かれ目は、ほぼここにある。
PS顧問ドットコムで支援したいこと
パートナーセールスの立ち上げに踏み出したものの、契約数だけが積み上がって誰も動かない——配配メール時代の自分の試行錯誤を含めて、私が一番身につまされる場面です。だから顧問ドットコムでは、まず「最初の1社で自社内にナレッジを残す」設計を一緒に組みたいと思っています。
ディストリビューターや大手販社、士業の先生方への入り方、案件同席を続ける運用設計、お友達関係をKPIに落とす評価軸、そして経営に対するコスト構造での説明資料まで。構築フェーズから運用フェーズへの橋渡しを、20年超の現場感覚で伴走します。
「ゼロイチを始めたいが、どこから手をつけていいか分からない」「立ち上げて1年経つが手応えがない」——どちらの段階でも、お気軽にご相談ください。