パートナーが動かない理由を、人ではなく構造で考える
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― 福岡支社立ち上げとパートナービジネスから見えた、施策より前提の話 ―
はじめまして。元株式会社マネーフォワードにて、パートナービジネスの立ち上げ・拡大に携わっていた青山徹と申します。大学を卒業後、通信事業会社で営業を経て、2015年にマネーフォワードへ参画しました。
2016年からは九州・沖縄支社長として福岡拠点をゼロから立ち上げ、2018年からはパートナービジネス事業の立ち上げを担当しました。
制度設計や戦略だけではなく、最初は現場でパートナーと一緒に動きながら何が機能するかを探していました。そこから見えてきたものを再現可能な型として整理し、少しずつ事業として広げてきました。
最終的には、士業・金融機関・通信・ディストリビューターなど、多様なパートナーチャネルに関わりました。多い時には1日3桁規模の紹介や問い合わせが流入し、異なる特性を持つチャネルが混在する環境で、その設計と運用に携わってきました。
振り返ると、福岡支社立ち上げもパートナービジネス立ち上げも、共通していたのは「正解がない状態から、何が機能するかを見つけ、それを再現可能な型にしていく仕事だった」という点です。
福岡支社をゼロから。人とのつながりと、構造の違いを学んだ
最初のゼロイチは、福岡支社の立ち上げでした。2016年、マネーフォワードが札幌・名古屋・福岡の3拠点を同時開設するタイミングで、九州・沖縄エリアの責任者として赴任しました。
地方拠点立ち上げでは、地域の士業の先生方、地銀、地場企業、自治体など、その土地のネットワークの中に入っていく必要があります。
振り返ると、福岡では人とのつながりが事業を大きくした実感があります。紹介が紹介を呼び、人との信頼関係が次の機会につながっていく。数字だけでは説明しきれない力がありました。
一方で、この経験は後のパートナービジネスで別の気づきにもつながりました。
支社の拡大はどちらかというと、人とのつながりを軸にスケールしていった経験でした。ただ、パートナービジネスでは人との関係性や担当者の熱量に依存しすぎると、本来見るべきものを見落としてしまうこともあります。
動く・動かないを人の問題にしてしまうと、営業力、相性、熱量の話になりやすいです。でも実際には、その状態を生み出している構造や前提があることも多くあります。
人を否定するのではなく、人だけを見ない。
この視点は、その後のパートナービジネスを考える上で大きな土台になりました。
2018年、パートナービジネスをゼロから。最初に見た現実
2018年からはパートナービジネス事業の立ち上げを担当しました。当時のSaaS業界は、「ここからパートナービジネスをどう作るか」がテーマになっていた時期だったように思います。
今振り返ってみると、パートナービジネスの面白さは、正解がない点にあった気がしています。
同じ制度や同じ施策を真似しても、製品や顧客、チャネルの前提が違えば同じ結果にはなりません。多くの人は成功事例や手法を探しますが、実際には「何が正解か」より、「何を前提に設計するか」の方が重要なケースも多かったように思います。
当時、自分の周囲や業界の中でも、似たような話は比較的よく見かけた気がします。
パートナー数は増える。勉強会にも来てくれる。最初は動く。でも思ったように案件が出ない。担当者が変わると止まる。活動量も徐々に下がっていく――そんな状況です。
当時は、営業力、教育、熱量、インセンティブなど、いわゆる「動かない理由」を一通り疑いました。もちろんそれらが原因のケースもあります。
ただ振り返ると、それらは比較的テクニカルな要素だったのかもしれません。
本質的にはもっとファンダメンタルな部分──誰が成長主体なのか、誰が顧客との関係を持つのか、何を期待しているのか。そうした前提が曖昧なまま進んでいたことが大きかったのではないかと思っています。
施策より前提。
そして今振り返ると、「問題は人ではなく構造として見た方が整理しやすいケースも多かった」と感じています。
最初に決めるべきは、どのパートナーと組むかではない
パートナービジネスを考えるとき、最初から「どのパートナーと組むか」だけを考えると、少しズレが生じやすくなる気がしています。
先に見るべきなのは、自社のプロダクトや顧客に対して、パートナーがどの位置にいるべきかです。
メーカーが前に出て伴走する形もあれば、プロダクトや導線で自然に広げる形もあります。あるいは、パートナーのサービスや業務の中に入り込む形もあります。
その後、自分なりに振り返る中で、パートナービジネスは大きく3つくらいの型で整理できるのではないかと思うようになりました。
1つは、メーカーが顧客やパートナーに比較的近い距離で伴走する形。
1つは、プロダクトや導線を中心に自然に広がっていく形。
もう1つは、パートナーのサービスや業務の中に入り込んでいく形です。
もちろん実際には完全に分かれるものではなく、重なる部分もあります。
この考え方は、今後も業界の発展とあわせて整理を続けていく必要があると思っていますが、メーカー・パートナー・顧客の関係性を構造として捉える考え方として、The Lever-Based GTM Model(SSRN) にまとめています。
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=5919642
ただ重要なのは、「どの型が優れているか」ではなく、自社の製品や顧客、販売プロセス、導入支援の重さに合わせて、どの構造が自然なのかを見極めることでした。
成功事例を真似するより、自社の構造を理解することの方が大切なケースも多いと感じています。
その視点があると、「どのパートナーを探すか」ではなく、「どんな役割のパートナーが必要か」を考えやすくなった気がしています。
契約直後のパートナーを「動く状態」にするための考え方
自社のことを「説明できる」ではなく、「判断できる」状態にする
前提として、自社プロダクトを説明できること自体ももちろん大切です。ただ、それだけでは少し足りないケースもあると思っています。
むしろ、担当者自身が自社のことを判断できる状態になっていることの方が重要でした。
イメージとしては、感覚だけではなく数字や現場理解も含めて、「何となく良さそう」ではなく判断できる状態です。
しかも営業だけでは足りません。
マーケティング、営業、顧客理解、導入、運用まで含めて、事業全体として理解できている必要があります。
パートナーは曖昧なものには投資しづらいものです。
逆に、自社側が判断できるレベルまで理解できていると、どんなパートナーが必要なのかも自然に見えてくることが多かった気がします。
勉強会は「製品説明」ではなく「橋渡し」
勉強会は製品説明の場でもありますが、それだけでは少しもったいない気もしています。
本来必要となるメーカーの役目は、パートナーが自然に動ける状態への橋渡しです。
一緒に営業し続けることではなく、「次から自分たちで動けそう」と思える状態を作ることが、一つのゴールなのではないかと思っています。
オペレーションは、営業成果を最大化するためにある
パートナービジネスの立ち上げ拡大フェーズでは、売上や戦略の議論が中心になります。
ただ実際に規模が大きくなると、営業の表側よりも裏側のオペレーションのほうに負荷がかかり始めます。
営業成果を最大化するためには、オペレーションを正しく保つことも、見落とされがちですが非常に重要です。
そういった意味では、立ち上げ期における責任者には、自社のデリバリーフローも含めて幅広く設計していくことが求められる場面も多いと感じています。
自走しているパートナーの定例は、勇気を持って減らす
立ち上がり初期は密なコミュニケーションが必要です。
ただ、ある程度自走する状態になった後は、関わり方を変えることが成長を加速させるケースもあります。
最初は「1聞いて1できる状態」を作ることが大事ですが、その先では「1聞いて10できる」状態が起こることがあります。
それは、自社だけでは思いつかなかった売り方や市場、顧客との関係性を、パートナー側が持ち始める状態です。
だからこそ、メーカー側が道筋を示しすぎると、逆に成長を鈍化させてしまうことがあります。
必要なのは管理し続けることだけではなく、必要なタイミングで支援できる距離感を作ることでした。
PS顧問ドットコムで支援したいこと
特にお役に立てるのは、パートナービジネスの0→1立ち上げフェーズだと思っています。
制度や施策は後からいくらでも足せます。
ただ、前提や構造が曖昧なまま進むと、その後手戻りが発生することも少なくありません。
私自身、福岡支社立ち上げやパートナービジネス立ち上げの中で、多くの試行錯誤をしてきました。
ただ振り返ると、本当に価値があったのは個別の成功体験ではなく、そこから何が再現可能なのかを整理することでした。
支援でも単なる経験談をお伝えするだけではなく、なぜそうなるのか、どこに前提があり、どんな構造になっているのかを一緒に整理しながら、再現できる考え方としてお渡しできればと思っています。